松本三和 - Miwa Matsumoto

  ヒメジョオン
2010年・45.5x38cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  オリオン座
2010年・162x130.3cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
image   春の花
2010年・53x65.2cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  雨粒
2010年・100x80.3cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  ベニシジミ
2010年・60.6x50cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  草の花
2010年・72.7x60.6cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  蝶と白い花
2010年・45.5x53cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  カタバミ
2010年・72.7x60.6cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
 
2010年・33.3x22cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  つぼみとカマキリ
2010年・33.3x24.2cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  ヒメジョオン
2010年・41x31.8cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  昼とカマキリ
2010年・50x65.2cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
  キンメツゲ
2010年・53x33.3cm
キャンバスにアクリル、オイルバー
     
Little Tree
2009年・130.5 x 89.5cm
キャンバスにアクリル、オイルバー

Close Gazing
2008年・80.2 x 65.5 cm
キャンバスにアクリル、オイルバー

 

上空
2009年・53.2 x 65.4cm
キャンバスにアクリル、オイルバー

wind, wind
2009年・116.7 x 91cm
キャンバスにアクリル、オイルバー

Windblown
2009年・60.5 x 50.2 cm
キャンバスにアクリル、オイルバー

Into the sky
2009年・91 x 72.8cm
キャンバスにアクリル、オイルパステル

 

木の中を鳥たちが飛んでいる
2009年・27.4 x 22.2cm
キャンバスにアクリル、オイルバー


鳥と木が夕日に染まった
2009年・65.2x53cm
キャンバス,、油絵具、オイルバー

Moon
2009年・60.6 x 72.7cm
キャンバス,、アクリル絵具、オイルバー

浮雲
2008年・38 x 45.5 cm
キャンバスに油彩、オイルバー

江の島の波
2009年・45.5 x 53cm
キャンバス,、油絵具、オイルバー

8月
2009年・45.5 x 33.3cm
キャンバスに油彩、オイルバー

4月の木
2008年・112x145.4cm
キャンバス、油絵具、オイルバー


2008年・116.7x91cm
キャンバス、油絵具、オイルバー

 

木立の中の枝
2008年・72.8x50.3cm
キャンバス、アクリル絵具、油絵具、オイルバー


2008年・41x60.7cm
キャンバス、油絵具、オイルバー

2008年・53.2x33.7cm
キャンバス、アクリル絵具、油絵具、オイルバー

 

2008年・80.5x100cm
キャンバス、油絵具、オイルバー

窓越しの光
2008年・60.8x41cm
キャンバス、油絵具、オイルバー

 

盛り上がる
2008年・45.6x38cm
キャンバス、油絵具、オイルバー

日差しと暑さ
2008年・65.2x53cm
キャンバス,、油絵具、オイルバー

レッドハウス
2008年・72.7x60.6cm
キャンバス,、アクリル絵具、油絵具、オイルバー

 

 

松本三和:線の絵画と世界の変奏

 

西村智弘(美術評論家)

 松本三和は、ものの見方に対して独自な感性をもっている。それは、画家である松本が本能的に培ってきた感性である。あるいは、そのような感性をもっていることが彼女を絵画に向かわせたのかもしれない。松本は、自分の感性にきわめて忠実であって、そこから決してはずれないし、不要なものをもちこまない。ここから、彼女の作品に特有のスタイルが生まれている。
 松本の作品は、即興的に描かれたような単色の線だけで成立している。色面は存在せず、きわめてドローイング的である。しかしそれは、ドローイングそのものではなく、やはりひとつの絵画作品として成立していると考えたい。松本の作品は線の絵画である。
 つねに松本は、目の前にある具体的な対象を描いている。彼女にとって、対象との出会いは重要である。松本がなにを見て描いているかは、作品のタイトルからわかるが、それを理解することは必ずしも重要でないだろう。なぜなら松本は、個々の事物を描写しているわけではないからである。それでは、彼女はなにを描いているのか。それは、目の前に生起する現象であり、その現象があらわれる仕方であるといってよい。
 一般にわたしたちは、個々の事物を輪郭の定まった固定的、静止的なものとして認識している。しかしこれは、事物をいわば外側から概念的に捉えたときの見方である。それに対して松本は、概念的に物事を見ていない。彼女は、目の前にあらわれるさまざまなものを単体として眺めないのであって、事物を独立的な物体に分割しないし、地と図を対立的に捉えない。このことは、世界を純粋な変化として凝視していることを意味する。
 本来、わたしたちの生きている世界は静止していない。それは、一瞬のうちに姿を変えているのであり、決して同じ状態でありえない。松本の視線は、そのような動的な世界を捉えている。このとき世界は、輪郭をもった事物の並列ではなく、さまざまな事象が相互に関連しあいながら、つねに変化する持続としてあらわれてくるであろう。いわば松本は、対象が概念的に固定化される以前のありのままの状態に向き合っている。
 松本がよく描くのは、木立や雨や光など、ゆらいでいるもの、移ろいゆくものである。明らかに彼女は、たえず変化し、同じ形をとどめないものに惹かれている。しかし、このゆらぎや移ろいこそが、本来わたしたちの前に世界があらわれることの本質なのである。
 松本は、目の前にあらわれるものをできるだけ自然な状態で描こうとしており、画家の態度としてはむしろオーソドックスである。しかしその描写は、写実的な再現に向かわない。たとえば、西洋の幾何学的遠近法がつくりだす均質空間ほど松本に無縁なものはないだろう。遠近法は、リアルな三次元的なイリュージョンを実現する代わりに、時間的な要素を画面から駆逐している。それは、事物に堅牢な輪郭を与えることによって世界を凍結させてしまう。それに対して松本は、輪郭によって固定化されることから事物を解放するのであり、たえず変容する世界へとふたたび投げ返すのである。
 松本は、決して多くの線を描かない。画面は、ほとんど最小限の線から成り立っている。おそらく彼女にとって、描きこむことによって逃げてしまうなにか大切なものがあるのである。そのために松本は、最小限の線によって本質的なものをつかむという選択をする。
 世界は絶え間ない変奏のなかにある。松本が捉えようとしているのは、その一瞬一瞬のあらわれである。だから、松本の画家としての課題は、目の前にあらわれる現象、つねに変化し続ける世界をいかに絵画として実現させるかにあるだろう。しかし、単に対象のかたちをなぞるだけでは、本来もっていた変化の多様さが失われてしまう。松本が行っているのは、目の前の変容する世界を線の律動として画面によみがえらせることである。
 松本の線は、それ自体がひとつの運動としてある。彼女は、線に生命のリズムを与えるのである。その線は、輪郭の一部をなぞっているようでありながら、相互に関連しあい、共鳴しあうことによって、画面のなかにひとつの調和をつくりだす。つまり、松本の絵画そのものが絶え間ない変化を内包している。単にそれは、かつてあったものの再現ではなく、今まさに生まれつつあるものとして存在している。いわば松本の描く線は、永遠の現在をつくりだしている。このとき彼女の絵画は、世界の変奏そのものになる。
 松本は、たえず変化する世界を絵画という二次元の平面に改めて誕生させている。そうすることによって彼女は、目の前に生起する世界の多様性を積極的に肯定しているといえるのではないか。わたしたちは、松本の絵画によって改めて世界と出会い、新たに世界を発見することになるだろう。

2008年6月

 

松本三和
MATSUMOTO Miwa 
略歴
1975 福岡県に生まれる
1998 東京造形大学造形学部美術学科I類(絵画)卒業
1999 東京造形大学美術T類版表現コース研究生修了
2004 第18回ホルベインスカラシップ奨学者
2009 第1回絹谷幸二賞候補

 

個展

 

2010 『野はら野花』/Gallery FURUYA(東京)
2009 『晴れのひとつ』/Gallery FURUYA(東京)
2008 『昼』/Gallery FURUYA(東京)
2007 『CATCH』/switch point(東京)
2006 岡村多佳夫企画第20回/アユミギャラリー(東京)
2005 『はなつ』/相模原市民ギャラリー ア−トスポット(神奈川)
2004 『口火』/switch point(東京)
2002 『浮かれ』/switch point(東京)
2001 『新世界』/西瓜糖(東京)
2000 トキアートスペース(東京)
グループ展
2009 東京コンテンポラリーアートフェア2009/東京美術倶楽部(東京)
つばめブックスリリース展/switch point(東京)
2008 「ハ−ベスト−原健と160人の仕事」/ギャラリー東和(東京)
「ハ−ベスト−原健と165+1人の仕事」/東京造形大学附属美術館 ZOKEIギャラリー(東京)
「Hills&Villages」/アユミギャラリー(東京)
「京橋3-3-8」/藍画廊(東京)
2007 第三回造形現代芸術家展「場の記憶‐虚実の狭間で」/東京造形大学附属横山記念マンズ−美術館(東京)
「YOKOHAMA MAMA」/万国橋ギャラリー(神奈川)
2006 「岡村多佳夫企画の10周年記念展」/アユミギャラリ−(東京)
2005 「WORKS IN STUDIO 作品としてのスタジオ」/Studio Co・ONS・STUDIO牛小屋(神奈川)
2004 「FRAT PLAT」/西村ニシムラ智弘-選/神奈川県民ホール(神奈川)海岸通りギャラリーCASO(大阪)
「ア−トがあれば」/東京オペラシティ−ア−トギャラリー(東京)
「またたきノック」/ラ・ガルリ・デ・ナカムラ(東京)
2003 「ココロ」/switch point(東京)
「さがみはらあーと'03 オープン・スタジオ展」/ONS/相模原市民ギャラリー(神奈川)
「栞展=栞店」/藍画廊(東京)
「kaleidoscopic gaze」/ギャラリーマイ(東京)
2002 「彩色健美」/洋協ホ−ル(東京)
「栞展」/藍画廊(東京)
2001 「リトルネロ−新世代の作家たち」/文房堂ギャラリー(東京)
文献
2009 毎日新聞 3月8日掲載 第1回絹谷幸二賞:関連記事
2008 西日本新聞 7月2日掲載 松本三和「昼」:展覧会記事/内門博-文
  Gallery FURUYA リーフレット「松本三和:線の絵画と世界の変奏」西村智弘(美術評論家):評論
  「相模原市民ギャラリーの10年 1997-2007」P.24-26:関連記事
2005 相模原市民ギャラリー スタッフセレクション#7 松本三和展『はなつ』解説/木下朝美 美術専門員-文
アクリラート別冊2005「The Scholar 20 Perspective」P.29, 85-87
2004 brick sprout vol.1「exchange 井上実×松本三和」P.8-9
2003 BT Vol.55, No.838/美術手帖8月号  白坂ゆり-文「特集アトリエの建築的冒険」P.70-77:関連記事
2002 BT Vol.54, No.814/美術手帖1月号  白坂ゆり-選・評「ギャラリー・レビュー東京エリア」P.187
BT Vol.54, No.816/美術手帖2月号  
「特集ゼロゼロジェネレーション 2000年代ニッポンの新世代アーティスト126人」P.48-49
2001 etc./エトセトラ11月号「第27回 interview 松本三和」聞き手 齋藤一典 P.52-53
  文房堂ギャラリー リーフレット「絵画の変奏」西村智弘(美術評論家):関連評論
展覧会図録
2009 松本三和「晴れのひとつ」リーフレット Gallery FURUYA
2008 松本三和「昼」リーフレット Gallery FURUYA
2007 2007年度第三回造形現代芸術家展「場の記憶 虚実の狭間で」東京造形大学
2004 「FRAT PLAT」神奈川県民ホール(神奈川)海岸通りギャラリーCASO(大阪)P.34-35
2003 「SAGAMIHARART-03 オープン・スタジオ」相模原市民ギャラリー  
2001 「リトルネロ 新世代の作家たち」リーフレット 文房堂ギャラリー
以 上
 
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